2008年07月24日

だれの産廃?

法律というのは、用語の意味や考え方など、世間の一般的な常識とは異なることがたまにありますので、あまり法律に慣れていない方は注意が必要になります。

また、ある程度法律の知識のある方・専門家と言えるような方であっても、不慣れな分野の法律を扱う場合は、それまでの常識が通用しないこともありますので、注意が必要です。(もっとも、専門家の方は、そのようなことはすでにご承知と思いますが。)

廃棄物処理法の産業廃棄物の場合、「だれの産廃か?」(排出事業者は誰か?)という問題は、一見簡単なように見えて、意外と悩ましい問題であります。

事例で考えてみることにしましょう。
たとえば、製造業者Aから販売業者Cへ、Aの製品を納入したとします。その際、物流業者Bが製品の梱包を開けて、販売できる状態にしてからAへ納入するよう、AからBへ作業(開梱作業)を委託したとします。すなわちモノの流れは、

製造業者A → 物流業者B → 販売業者C

となります。

この場合、開梱作業に伴い排出される産廃(梱包材、木箱、パレットなど)は、だれの産廃になると思いますか?

梱包をしたのはAで、開梱作業をBに委託したのもAですから、一般的な感覚から言うと、「排出事業者」はAになりそうな気がします。

しかし通常、この流れから言うと、法律上の排出事業者はBになります。
一般的な感覚で言うと、Bの立場からすれば、開梱作業をAから委託されただけであって、梱包材などもそもそもAのもののような気がしますから、むしろ勝手に捨ててしまってよいものかどうか、心配になってしまうのではないかと思います。

この点について、「フジコー事件」(東京高裁平成5年10月28日判決、平成3年(ネ)第3991号)という有名な判決に、考え方が示されています。

まず、産業廃棄物処理に関する法の仕組みをみると、法は、廃棄物を一般廃棄物と産業廃棄物とに分けているが、一般廃棄物の処理については主として市町村が行うことになっているのに対し、事業活動に伴って生じる産業廃棄物については、三条一項において、「事業者は、その事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない。」と定め、一〇条一項において、「事業者は、その産業廃棄物を自ら処理しなければならない。」と定めて、産業廃棄物を排出する事業者に産業廃棄物の処理責任を負わせ、しかも、自ら処理することを原則とした。これは、住民の日常生活から排出されるごみ等の一般廃棄物と異なり、事業活動に伴って生ずる廃棄物については、排出原因となる事業の利益及び損失が帰属する排出事業者がその処理の負担を負うのが当然であるという判断によるものである(ただし、右でいう「事業者」の意義等について特にこれを定めた規定はない。)。


法は、事業活動に伴い廃棄物を排出した者には例外なくすべての者に廃棄物処理責任を負わせているのであって、そこに何らの限定はないというべきであり、事業活動による利益の帰属する者がその事業の過程で廃棄物を排出しながら、適正な廃棄物処理が期待できないが故に事業者としての処理責任を負わないでよいという解釈は法からは出てこない。法は、廃棄物を排出した事業者一般に処理責任を負わせるとともに、事業者の自主性にゆだねたのではその適正処理が必ずしも期待できないことを予期して、その適正な処理を確保するため、一定の処理基準を設けてそれに従う義務を負わせ、その義務履行を行政上命令できるようにし、また、自己処理ができない事業者には一定の第三者に処理を委託することを認めるなどの仕組みを設けたのであり、適正処理が期待できない者は処理責任を負わせる事業者から外すという解釈は到底採り得ないところである。


産業廃棄物がある事業者の事業活動に伴って排出されたものと評価できるかどうかは、結局、当該事業者が当該廃棄物を排出した主体とみることができるかどうか、換言すれば、その事業者が当該産業廃棄物を排出する仕事を支配、管理しているということができるかどうかの問題に帰着するが、少なくとも産業廃棄物を排出する単位として観念される一まとまりの仕事(何がこの意味の一まとまりの仕事であるかは、社会通念に従って判断される。)の全部を請け負い、それを自ら施工し、したがってその仕事から生ずる廃棄物を自ら排出した事業者は、たとえそれが下請けの形態をとっていたとしても、通常、廃棄物を排出した主体(排出事業者)に当たるということができる。もっとも、右の一まとまりの仕事の一部のみを元請業者の指揮監督の下で請け負う事業者を考えると、その場合は、当該下請業者は元請業者の純然たる手足であって、廃棄物が生ずる仕事全体を支配管理しているとはいえないから、元請業者のみが廃棄物を排出した主体に当たるというべきである(その場合、下請けは、法にいう事業者には当たるが、廃棄物を排出した主体とみることができないということになる。)。


この判決から、以下の3つのポイントを読み取ることができます。

1.モノの所有者ではなく、排出原因となった事業を行う者が、産廃の排出事業者である。
2.排出事業者の責任は例外なく全ての事業者が負うものであり、事業者が勝手に決められるものでもない。
3.事業活動の主体とみることができるかは、社会通念上ひとまとまりと言える仕事を請け負っているかによる。


これらの考え方から、事例を考えてみると、この産廃の排出原因は開梱作業であり、その仕事を請け負っている物流業者Bが排出事業者になると、考えることができます。社会通念上ひとまとまりと言える仕事かどうかという点で曖昧さが残りますが、複数の県の担当者に聞いてみると、少なくとも開梱作業に関してはひとまとまりの仕事と捉え、この場合の排出事業者は物流業者Bだと判断しているようです。

もちろんこれは、いろいろな委託関係があり得ますので、誰の事業場で作業を行うか、材料や作業設備・道具等は誰が提供しているかといったことで話が変わってきます。

もちろんBは嫌がりますし、またBが販売業者Cの関係会社だったりすると、製造業者Aは自身の顧客でもあるCに遠慮してものが言えなかったりして、もめてしまうことが多いのですが、曖昧な部分の確認も含めて、先回りして地元の県の担当者の見解を確認しておくと、単なる一取引先の意見として言うより、Bを説得する良い材料になると思います。

ここ(排出事業者)を間違えてしまうと、それから先の話は、前提がことごとく狂ってしまうことになりますので、慎重な判断が必要になります。
posted by JUN at 02:38| Comment(2) | TrackBack(0) | 環境 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
昔の記事なので有効か不安ですが・・・

製造者が木箱の引取りを客先から依頼され了解している場合においては、製造者が排出事業者となる可能性があると思います。

この場合、物流業者は産廃の運搬を委託されたものとして、マニフェストを携帯すべき義務があると考えられます。
(ただし、梱包の形態によって産廃に当たらない可能性もあるとの見解があります)

私の挙げた例だと誰が排出事業者か?は実際どうなるのでしょうか。
Posted by NK at 2010年04月19日 17:58
NK様

コメントありがとうございます。
今までにあまり経験のない過密スケジュールの中で、なかなか落ち着いて考える時間がとれず、遅くなってしまい申し訳ありません。

さて、挙げていただいた件ですが、たしかに廃棄物の定義にも関わるような、なかなか難しい問題ですよね。

普通に考えて、梱包材をわざわざ引き取らせる経済合理性にも少々疑問がありますので、その後の梱包材の行き先など、全体の流れが具体的に明確にならないと、何とも言えないところもありますが、製造業者の指示で引き取るのであれば、おっしゃるとおり、いろいろなケースが出てくると、私も考えます。

個人的には、例えばですが、

物流業者が引き取って廃棄物処理業者に引き渡す場合は、物流業者を排出事業者とする理論構成で形を整える、

物流業者が引き取って製造業者まで持って帰ってくる場合は、その間は廃棄物として扱わない(それで無理がある場合は、そもそもそのような処理はしない)、

…という処理が良いのかなと思ったりします。

いずれにせよ、引き取るという指示は、経済的にも法的にも合理性から外れた説明がしにくい行為という感じがしますので、私のような製造業者の立場からすると、そのような指示自体、あまり安易にしないほうがいいのかなという感じがします。
Posted by JUN at 2010年05月06日 00:25
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