2012年02月04日

行政指導とコンプライアンス

日本で仕事をしていると付き物なのが行政指導ですが、「法律問題ではない」と本社の法務の人が逃げがちで現場任せになっている分野でもあります。

具体例を挙げると、危険物の取扱いがある工場の建物については、しばしば消防の立ち入りがあります。
その中で出た話らしいのですが(私は関わっていない)、建物の外壁に接して設置されている自販機が問題になり、自販機の場所を移動することになったということで、工場サイドから社内に展開されたことが以前ありました。

ただこの展開の仕方が、行政指導の性質も理解せず、指導の根拠も確認せず、「法令遵守のため」と、まるで明確な法令違反があったことを匂わせるような話になってしまい・・・

何年もずっと設置されていた建物と自販機が、消防も今まで何度も立ち入りで見ているはずなのに、突如法令違反になるのもおかしな話です。

この指導の法的な根拠を確認すると、危険物一般取扱所となっている工場などでは、消防法によりエリア内の火気使用が当然禁止されているほか、消防法の下位規定にあたる「危険物の規制に関する政令」の中で、周囲に3mまたは5mの空地を保有すること(いわゆる「保有空地」)とされています。(令9条1項二号)

この「空地」の定義がはっきりしないところもあり、建物は当然不可でしょうが、どこまで「空」ければいいのかが難しいところです。消防の立ち入りでも、自販機は不可とされましたが、同様に置かれているテーブルやベンチについては何も言及がなく、そのままにされています。出ている通知類を見ると、樹木の例では特に大きすぎなければOKとされているようです。

そもそもこの空地は一般に、火災の際の延焼を防ぐため・消火活動を妨げないためのものであると説明されています。そこから考えると、建物の前はトラックも通る構内道路ですから自販機があったがためにどこかに延焼するとも思えないし、大きな建物ですからその片隅に自販機があったがために消火活動ができないという状況も考えにくいところです。

行政指導とりわけ消防の指導は、こういった基準や根拠が曖昧な中でされることがしばしばで、この辺が評判の悪さに繋がっているように思います。(消防の立ち入り自体は一般には紳士的に行われているようです。法律上は権限を持ってできる(法4条)のですが。)

また行政指導では、法的な強制力がないにもかかわらず、その点を行政の担当者に確認しようとすると、「強制力はない」と答えてしまうと相手に聞いてもらえないと思ってしまうのか、行政もまるで強制力があるかのようなことを言い張ってしまうようなところもあります。その点はこちら側も行政法の知識や根拠法令を調査する能力が必要です。

もちろん、内容を吟味した上で納得して自ら行政指導に従うことは大変結構なことで、防災に役立つなら自販機も移動すればいいと思うのですが、「行政指導=法令」のような扱いは、非常に問題があると考えます。

それは、今回のことで言えば、自販機の設置場所が法令違反でそれが何十年も放置されていたのであれば、本来なら責任問題です。法令ではないので当然そうはなりませんが、そういう状況があることで「法令違反があっても大丈夫なんだ」といった、コンプライアンスに対する誤った認識や緩みを生じかねないところがあります。

また、組織として限られたリソース(資金・人材・工数)を配分していく上で、優先順位に狂いが生じることにもなるでしょう。自販機は移動したが産廃のマニフェストは管理していなかった、では話になりません。マニフェストはお縄になるレベルの話です。

行政の担当者をその分野の専門家として活用し、うまく付き合うことも重要なことですが、「行政に聞けばいいや」で依存してオールを任せてしまうのは危険です。「行政は行政の都合でものを言う」のだ、ということをよく認識して、こちらも振り回されない程度には勉強しておく必要があるでしょう。
posted by JUN at 04:14| Comment(0) | TrackBack(0) | └ 行政法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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