2006年10月11日

「現場法務」とは

企業の「法務」というと、どんな仕事を思い浮かべるでしょうか。
最近流行の企業買収や事業譲渡、内部統制対応などが花形でしょうか。
契約書の作成・点検や、会社法対応などが定番でしょうか。

「法務」に対する考え方や組織は、会社によってさまざまです。
しかし言えることは、法律の資格が「弁護士」「司法書士」「行政書士」といった階級社会であるのと同様に、企業の法務もまた、法体系の上位である民法や商法から、法体系の末端に属する名前も聞いたことのないような法律まで、扱う法律によって、法体系をそのまま引きずった厳然たる階級社会であるということです。

ですが、本当にそれでよいのでしょうか。
世の中には無数の法律があり、企業は事業活動を行う上で多くの規制を受けます。気付かずに法律違反をしていることなど、細かいことなら決して珍しくはありません。しかし現実は、商法だろうと廃棄物処理法だろうと、法体系や知名度に差はあれど、違反は違反なのです。

一方でコンプライアンスが重要な経営課題と叫ばれ続けながら、日本企業はなかなか有効な手が打てていないのも、認めざるを得ない事実です。
少数のタコツボ法務部員が、訊かれたときだけ裁判官のように偉そうに答える、そんな体制で法律違反のリスクから企業を守れるでしょうか。
法的リスク回避のためには、現場での「早期発見」が大切です。
コンプライアンス意識をすみずみまで浸透させるためには、それなりの専門家をすみずみまで配置するか、代わりに適切な人材を選んで専門家に育て上げることが必要です。

また、問題が起こった場合は、法務部員が裁判官のように頭ごなしに「○」「×」を出すのではなく、現場と法律の両方を知る現場法務を橋渡し役として、その見解を尊重してよく連携しながら、現場にフィットする解決策を提示しなければ、企業の一員として仕事をしたとは言えません。

すでに意識の高い先進企業は「リーガルプロモーター」などと名前をつけて法務人材の現場への浸透を始めています。

今までも、法務部以外に必要に応じて法律担当者を置くケースはありました。私自身がそうです。ですが、全社的に位置付けられた立場でなければ、その存在が部内にとどまり、会社として法的リスクを回避するための役割として機能することはできず、上司の無理解や、法務部との「階級社会」の現実の中で悩むことになるでしょう。

微力ながらそんな皆さんを応援し、コンプライアンスを現場から支える「現場法務」として全社的に機能できるように、意識と地位の向上を訴えることが、当部屋の趣旨です。
ラベル:法務 現場法務
posted by JUN at 02:36| Comment(2) | TrackBack(0) | 現場法務日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
管理人様、はじめまして。著作権フリーライターのタイゾーと申します。「現場法務」につきまして、興味深く拝見しました。

法律の階級社会につきまして、同感しました。弁護士さんとお話しても、どうしてもM&Aや会社法、契約作成に目が行きがちです。また知的財産法の中でも、特許法がトップで著作権法はサブのような立ち位置で、それゆえに特許法のルールや論理を著作権法に当てはめて失敗することが見受けられます(当方のブログで取り上げたJISの著作権はその典型で、今年のISO(国際標準化機構)総会で問題にされました)。

最近、誰でもネットなどで情報発信を誰でもできるようになって著作権が注目を浴びていますが、実際には今まで「業法」の扱いだったので、まさに「少数のタコツボ法務部員が、訊かれたときだけ裁判官のように偉そうに答える」のような状態で、逆に言えばどんなデタラメな回答をしても、それが世間で大抵通用してしまう状況です。そして所管省庁の文化庁に問い合わせて事を済まそうとしたところ、その回答が最高裁判所で覆されることがママあります。

当方は縁あって著作権法を生業としておりますが、世間でまっとうな法律として取扱われるようにしたいなあと思っております。

今後ともよろしくお願いします!
Posted by タイゾー at 2010年11月08日 03:48
タイゾーさん、コメントありがとうございました。今まで私の精神的・時間的余裕がなく、コメントが遅くなりまして、申し訳ありませんでした。

おっしゃるとおり、著作権法は、本業で関わっている場合を除いて、一般には隙間に落ちてしまっている印象がありますね。
特に当方は製造業なので、酷いものです。知財は技術だけ、法務は民法商法だけ。扱える者がいません。私が知財から離れて6年になりますが、たぶんまだ私が一番詳しいのではないかと(苦笑)

知財にいた頃、上司と計って、著作権の問題を業界団体の知財部会に持ち込んだことがありますが、参加者が「知財の問題」と認識できず、混乱に陥ったという笑い話があります。(自分の関心で仕事を選ぶのはプロではないよ!)

知財にいた頃の私の社内広報活動の甲斐もあって、違法行為をしない程度に意識はできてきたようですが、専門知識がないので、社外のいい加減な見解を鵜呑みです。これがつい数年前まで東証一部上場だった企業の実態なのですから、嘆かわしい限りです。

ISO14001の規格は、現在の職場で扱っていますが、納得できるかどうかはともかく、ISOも経産省も規格の著作権について頑ななようですので、私が異動して来てからは、規格のコピーの配布や社内ネット等への掲載は止めてもらい、今は解説書籍の購入で対応しています。
Posted by JUN at 2011年02月04日 02:15
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