2014年04月06日

防災と安全配慮義務

2月25日に、東日本大震災の津波被害に関して、安全配慮義務との関係で地裁判決が出たと報道されました。

○津波犠牲訴訟、企業の過失認めず 七十七銀行女川支店「予見は困難」

結論としては、企業側の安全配慮義務違反を認めませんでした。
今後の防災活動の参考になる点もあるかと思いますので、要点を以下にまとめました。

全体的には、やはり日頃の真摯な防災活動と、行政や自治体のガイドラインや防災資料、および報道に基づいた対応といったところが、「安全配慮義務を果たした」という判断に影響しているようです。

詳細な時間経過など、当時が思い出されて生々しくもありますが、犠牲から目を背けず、少しでも教訓を得て後に伝えることも大切な気がしています。




○七十七銀行女川支店事件判決全文(仙台地裁)

<時系列的状況>

14:46 地震発生。津波予測(6m以上)あり。
15:00 当初の津波到達予想時刻経過。実際は未到達。
15:05 屋上への避難完了。支店長より本店へ報告。
15:14 津波予測が10m以上に修正(NHKテロップ表示のみ)。
15:20 津波予測の修正を音声により報道。
15:25 この頃、20m近い津波が到達と推定。



<争点/裁判所の判断

@地震・津波の災害について、会社側に従業員への安全配慮義務があるか?
→(派遣従業員含めて)安全配慮義務がある。

A立地の特殊性(高い津波が来るリアス式海岸沿い)に合わせた店舗設計にする義務があるか?
→「予想される津波を常に上回る高さに設計する義務がある」とまでは言えない。

B十分な安全教育を受けた管理者(支店長)が配置されていたのか?
→会社の災害対応プランの作成と周知、年1回の防災訓練、支店長も朝礼等で避難場所の確認をしており、問題はない。

C避難訓練の実施方法は適切だったか?
→自社の災害対応プランや県の防災資料の周知を図って実施しており、実施方法は適切である。
(避難当初、屋上の扉が開かなかったのは、地震の揺れによる歪みの可能性もあり、点検不十分とは言い切れない)


D支店屋上を避難場所に指定したのは誤りではないか?
→支店建物は県がガイドライン等で掲げる一時的な避難場所の条件に合致しており、指定自体を誤りとは言えない。

E支店長が避難前に重要書類の片付けを指示したのは人命軽視ではないか?
→支店長は警報発令を伝え、片付けを最小限にして避難するよう指示しているのだから、それだけで人命軽視とは言えない。

F支店長はメディアや見張り等による情報収集を怠ったのではないか?
→支店長は複数の行員に見張りとラジオによる情報収集を指示しており、情報収集を怠ったとは言えない。

G支店長は「6m以上」の津波予測を聞いた時点で、本来の避難場所である「堀切山」への避難を指示すべきではなかったか?
→支店屋上(13m)は一時的な避難場所の条件に合致しており、時間との兼ね合いで避難場所に選択したことは合理性がある。
→津波予測が「10m以上」に変更されたのは、避難を完了した津波到達予想時刻(15:00)より後のこと(15:14)である。
→津波予測の手段を持たない一般人の支店長が、その時点の気象庁予測に基づいて避難場所を指示することは合理性がある。
→支店屋上を超えるような20m近い津波まで、支店長が15:00より前に予見することは、客観的にも無理がある。
→安全配慮義務違反というには、当時の緊迫した状況でもなお配慮不十分と言える具体的な予見可能性が必要である。


H現に他の近隣の金融機関は高台に避難して助かっており、予見可能性が無かったとは言えないのではないか?
→他は木造であったり津波に対して強度不足であったり等、それぞれ事情が異なり、比較して論じることは適切でない。

I支店屋上への避難について報告を受けながら黙認した本店にも、安全配慮義務違反があるのではないか?
→支店長から報告を受けた時点(15:05)で、本店が20m近い津波を予見することは困難である。

J津波予測が10m以上に修正された時点(15:14)で、「堀切山」に移動すべきではなかったか?
→津波予測修正の発表は、13:20以前はNHKのテロップ表示のみであり、支店長が気付かなかったとしても無理はない。
→発表が津波到達予想時刻の後であり、移動はかえって危険であることを考えれば、移動しなかったことが義務違反とは言えない。

posted by JUN at 02:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 労働安全衛生 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック

トラックバックは承認後の反映で、テーマが無関係な場合は承認しないことがあります。言及やリンクは歓迎しますが、必須ではありません。
 【参考】トラックバックとは


このページは、一会社員が個人で作成しているもので、勤務先とは無関係です。
このページは、できるだけ高い独立性を維持するため、Seesaa BLOGその他の各種サービス提供者が自己の運営のために掲載するものを除き、あらゆるかたちの広告を排除しています。
Copyright(C) 2006-2016 JUN. All Right Reserved.