2014年08月17日

行政訴訟と住民の関係

先日の産廃処分場についての最高裁判決に目を通しました。

平成24年(行ヒ)第267号 平成26年7月29日 第三小法廷判決

産業廃棄物の最終処分場の周辺に居住する住民のうち,当該最終処分場から有害な物質が排出された場合にこれに起因する大気や土壌の汚染,水質の汚濁,悪臭等による健康又は生活環境に係る著しい被害を直接的に受けるおそれのある者は,当該最終処分場を事業の用に供する施設としてされた産業廃棄物等処分業の許可処分及び許可更新処分の取消し及び無効確認を求めるにつき法律上の利益を有する者として,その取消訴訟及び無効確認訴訟における原告適格を有するものというべきである。


岡部裁判長は民法学者ということですが、この判決は行政訴訟という面があまり考慮されていない気がします。

正当な手続を経て制定された明文の法こそ民意であり、行政処分は基本的に法が定めた基準と手続に則り、行政自身及び第三者の恣意的判断を許すことなく粛々とされるべきで、法のみならず個別案件の審査にまで正当な理由なく第三者が介入できるとなると、審査の公平性・透明性が担保できなくなるのではないでしょうか。

法と無関係に第三者の気持ちひとつで行政の判断が揺らぐなら、法とは何か、本当に法治国家と言えるのかという話です。

やむを得ない例外として「著しい被害を直接的に受けるおそれのある者」の原告適格を認めるというのも理解できますが、ある意味、行政手続の申請者の権利を害するおそれがあってもあえてする取消・無効の訴訟なのですから、原告の地位を認める理由にはそれなりの明確な証拠を要求しないと、バランスが悪い気がします。

被害が生じる証拠もないのに環境影響調査の対象地域だからというだけで原告適格を認めるというのは乱暴であるし、逆にそれだけ広く認めるなら、対象地域外だからという理由だけで被害が生じるおそれがない証拠もないのにあえて一名の原告適格を認めなかったことの説明がつかなくなります。

基本的に地域住民との問題は民事訴訟で争われるべきで、行政訴訟で争うことを認められるのは、法が定めた基準や手続に照らして問題があるか、被害が生じる恐れが明確になっているような、よほどのケースに限定されるべきと考えます。

かなり原則論で書きましたが、まぁもしかしたら、地方行政の実務はもっと「政治的」で、法より地元の有力者の意向が優先されるのが、すでに何の疑問も持たれないほど当たり前になっているのかもしれませんが(苦笑)

at 2014-08-06 02:20:46





【2014/08/17追記】

○ 参考:特許法(旧法)における考え方

今回のような判決があまり問題視されていないのは、国民たる申請者の権利保護という行政法の考え方が、あまりメジャーになっていないか、住民の声(?)の前に後回しにされているためかもしれませんが、本来は制度の中でバランスを取るべきものと考えられます。

逆に私がこの点に敏感になっているのは、私が特許法の勉強から入っているという経緯のせいかもしれません。一般的な行政法は学問的にもまだ発展途上という感じがありますが、その点、特許法(旧法)の考え方は、比較的バランスがとられていて、参考になるのではないかと思います。

特許審査と第三者との関係においては、出願時においてはその内容は秘密とされ、出願から1年6か月経過後に特許庁から内容が公開されるほかは、あくまで特許庁と出願人との間で法の定める手続と基準にのっとり進められることになります。

審査をクリアして特許査定がされ、特許庁に登録されると、一定期間(たしか半年くらい)は、誰でも異議申立てが可能で、異議申立てがされると、特許庁は法の定める手続と基準にのっとり、審査結果の見直しを行うことになります。(いわゆる「付与後異議」)

また、異議申立期間経過後も、無効審判の手続をとることは可能です。こちらは特許庁の行政手続でありながら、権利者と審判請求人による当事者主義的な民事訴訟に近い手続で、その性質上ほとんどの場合特許侵害の訴えに対する権利者へのカウンターに使われます。無効審判の請求も誰でもというわけにはいかず、一定の利害関係が求められることになります。

付与後異議・申立て期間の制限・職権主義的な手続で、申請者(出願人≒権利者)の不利益に配慮しつつ、特許の影響を受ける国民に広く異議申立ての門戸を開き、また当事者主義的な無効審判とは明確に分けている点で、合理的でバランスがとれている仕組みではないかと考えます。

※以上の特許法の制度は、異議申立て制度が廃止される2003年改正以前の制度を前提としています。異議申立て制度を2015年に復活させる改正法がすでに成立していますが、廃止前と同じ形になるかはまだ確認がとれていませんので注意ください。

※ここで言う「異議申立て」はあくまで特許法上のものであり、行政不服審査法の「異議申立て」とは異なります。行政不服審査法は広く行政行為(処分)一般に適用されますが、個別法に同様の制度がある場合は適用を排除するのが普通で、特許法も審査・審判関係については適用を排除しています。(195条の4)


posted by JUN at 05:34| Comment(0) | TrackBack(0) | └ 行政法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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